厚生労働省は、11月2日に「厚生年金基金制度に関する専門委員会」の第1回会合を開き、「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」を示しました。
同省では、この試案をベースとして、「厚生年金基金制度改革」を行いたい意向であり、今後の動向が注目されます。
上記委員会で示された厚生年金基金制度(以下、「基金」)の見直しに関する「試案」の主な内容は、次の通りです。
(1)特例解散制度の見直しによる「代行割れ問題」への対応
基金の「代行割れ問題」については、従来は「特例解散制度」により、分割納付の特例や厚生年金本体への納付額の特例が設けられてきました(時限措置)。しかし、母体企業の負担能力が著しく低下している基金では、特例措置を用いても解散できない状況です。
そこで、現行の特例解散制度の基本的な考え方・枠組みを維持しつつ、一定の見直しを行うとしています。見直し後の特例解散制度は5年間の時限措置とするようです。
(2)企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進
日本の経済基調が低成長に変化し、金融市場の変動幅が拡大する中、持続可能な企業年金を普及させるため、企業年金の選択肢の多様化を進めるとしています。
また、中小企業の企業年金を維持する観点から、基金から他の企業年金への移行を支援するための特例措置を設けるとしています。
(3)代行制度の見直し
代行部分の債務(最低責任準備金)の計算方法について、有識者の指摘等を踏まえ、厚生年金本体との財政中立の範囲内で適正化を図り、代行制度の今後の持続可能性に関する検証や厚生年金本体の財政に与える影響等を踏まえ、10 年間の移行期間を置いたうえで、代行制度を段階的に縮小・廃止していくとしています。
また、移行期間中の制度運営にあたって、解散認可基準等の見直しも行うようです。
AIJ問題に端を発した厚生年金基金の問題ですが、今後、改革に向けた動きが加速していく可能性もあり、厚生労働省では、関連法律の改正案を来年の通常国会に提出する予定です。