◆メンタルヘルスの状況は?
「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」という調査研究の結果が、経済産業研究所から公表されました。
この調査研究は、従業員のメンタルヘルスの状況を明らかにするとともに、メンタル不調を理由に休職する従業員がどのような要因で増加しやすいのか、また、従業員のメンタル不調によって企業業績が悪化することはあるのか、といった点を検証しています。
分析結果からは、「従業員数300~999人規模の企業」、「情報通信業」、「週労働時間が長い企業」でメンタルヘルス不調が多く見られることがわかりました。
また、メンタル休職者比率の平均は0.4%程度で、年齢層別では20~30歳代の若年層で目立っています。メンタル退職者比率では、規模の小さい企業でその比率が高くなっています。これは企業における病気休暇制度の普及度合いが密接に関係しているのでしょう。
◆どのような要因で増加しやすいのか?
労働時間が短いほど退職者比率が高いようです。これは、企業が把握している労働時間と、労働者の実労働時間との間に乖離がある可能性を示しています。
一般的に、企業規模が小さくなるほど総労働時間は長く、さらにサービス残業も多い傾向にある一方で、病気休暇制度は十分に整っていないと考えられます。このため、企業が把握する労働時間は短いが、サービス残業のために実労働時間は長くなっている労働者が多いと予想される中小企業では、メンタルヘルス不全に陥ると退職につながる割合が高い可能性があるということです。
◆メンタル不調によって企業業績が悪化する
メンタルの不調が企業業績に与える影響では、メンタル休職者比率は2年程度のラグを伴って、売上高利益率に負の影響を与える可能性が示されました。
休職者比率が労働慣行や職場管理の悪さを測る指標になっていると解釈すれば、メンタルヘルスの問題が企業経営にとって無視できないものとなっていると言えるでしょう。
◆何が有効な対策なのか?
メンタルヘルスの悪化要因や、職場の対策として何が有効であるのか、悪化の程度と企業業績への影響の関係など、職場のメンタルヘルスについては、まだ明らかになっていない部分も多いと言われています。企業が経営戦略としてメンタルヘルス対策に乗り出すのは、まだまだ暗中模索の状況なのかもしれません。
しかし、長時間労働の問題などは、後々の労使紛争の種ともなる問題ですので、企業は対策を検討する必要があります。